離婚原因民法770条1項5号
民法770条1項1号から4号までの離婚原因がなくても,その他婚姻を継続し難い重大な事由があるときには離婚請求が可能となります。
ここにいう「事由」(以下「5号事由」といいます。)に該当するか否かが問題となるものとして,以下のようなものがあります。
配偶者からの暴行
暴力の内容,被害の程度,暴力の原因によって5号事由となるか否かが判断されます。
性格や酒乱などに起因する暴行,執拗に繰り返される暴行は,5号事由に該当ると判断されやすいといえます。
不労(勤労意欲の欠如)
不労により,家計を困窮に陥れ,妻子の生活を省みないような場合には,5号事由に該当する場合があります。
借金
借金の額,理由によっては,5号事由に該当する場合があります。
借金が,家計を困窮状態に陥れるようなものではない場合や,借金がやむを得ない理由による場合には,5号事由には該当しないでしょう。
犯罪行為
現行民法では,配偶者の犯罪行為それ自体は離婚原因とされていません(旧民法では,配偶者が破廉恥罪等で刑に処せられたことが離婚原因とされていました。)
犯罪行為の内容,軽重,婚姻関係に与えた影響等の諸事情を考慮し,婚姻生活の継続が困難か否かによって5号事由に該当するかが判断されます。
親族との不和
配偶者の親族との不和は,それ自体は5号事由に該当しません。
もっとも,配偶者が,親族と同調して暴言をはいたり,関係改善に無関心であるなどの事情により,婚姻関係に溝が生じ修復不可能な程度にまで至っている場合には,5号事由に該当します。
宗教活動
配偶者の一方が宗教に傾倒して家庭内の不和を招き,または相手方の心情を著しく無視するような対応をとったことによって夫婦関係が悪化し,婚姻関係を継続し難い状態に至っている場合には,5号事由に該当します。
性格の不一致
離婚を望む方の一番の理由は,相手方配偶者との性格の不一致です。夫婦といえども他人ですので,多少の性格の不一致が存在することは当然であって,単に性格の不一致というだけでは5号事由に該当しません。
もっとも,双方に歩み寄りがみられず,婚姻関係を継続し難い状態にまで至っている場合には,5号事由に該当しえます。